大塚友美氏
トヨタ自動車株式会社 執行役員
Chief Sustainability Officer

3月 8, 2023 | Interview

圧倒的に男性が多かった職場で、変革へのモチベーションを強く持ってきた大塚様。

トヨタ自動車のDNAを大切にしながらも社会の変化に応じて進化を続けられるよう、様々なプロジェクトに携われてきました。この度はそんなトヨタ自動車株式会社 執行役員・Chief Sustainability Officer 大塚友美 様にお話を伺いました。

 

 

 

チーフサステナビリティオフィサーとして会社に良い変革を

ダイバーシティプロジェクトに人事部で取り組んだり、10年先のプロダクトを考える未来プロジェクト室や、ガズーレーシングというモータースポーツやスポーツカーの担当等を経験してきました。振り返ると、会社を少しでも良い方向へ変革させたいという気持ちでここまで様々な仕事に取り組んできたように思います。

チーフサステナビリティオフィサーというのは、主にステークホルダーの方々とのエンゲージメントを通じて、皆様のご期待やフィードバックをお聞きし、それをベースに さらに会社を変革させていくのが役割です。今までやってきた仕事の集大成だと感じています。会社がより良く変わっていくために貢献でき、それを次の世代へバトンを渡して行く、非常にやりがいのある役割だと認識しています。

 

 

「目標は定年退職です!」浮かないように気をつけていた新卒時代から、今へ

 

1992年の入社当時、私は事務系女性総合職1期生でした。まだ、女性の総合職が非常に少ない時代で、同期200人弱のうち女性が6人でした。「目標は定年退職です!」と言っていました。女子だからすぐ辞めるだろうと思われるのも嫌だなと思っていましたし、かと言って均等法第一世代の先輩方のようにバリバリ型でもないかなと思っていました。なので浮かないように、特別扱いされないように、過ごしているような新卒時代でした。

 

そんな中、10年目にダイバーシティのプロジェクトに携わる機会がありました。「女性活性化グループ」に異動になった時に、ダイバーシティすなわち「人と違うこと」に価値があることを学び、できるだけ人と同じように、と考えていたそれまでと大きく考えを変えました。同時に皆に伝えていくことの重要性を感じました。このプロジェクトでは様々な変革にチャレンジしました。

当時は育児と仕事の両立支援が課題だったので、トヨタ自動車で初めての託児所を開設したり、当時は珍しかった在宅勤務制度も取り入れました。

 

また、未来プロジェクト室にアサインされた時は10年先の未来に何が起こりうるか、クルマを離れて発想したを「未来年表」を作り、そこから想起されるプロダクトを考えました。この年表は様々な業種の方と議論しながら作ったので、その中で、自分の発想の狭さや、自分にない多様な視点を知ることができました。

 

例えば車を運転する際、他の車のマナーにイライラすると言われても、それまでは 自動車会社の問題だと思ったことはなかったのですが、クルマ業界で無い人から見れば なんとかして欲しい切実な問題だと気付きました。運転手や道路事情の問題だとして、勝手に仕事に線引きをするのではなく、車というハードの側からもドライバーに働きかけることを考えてみるというように、私達は車というハードでは無く、お客様の体験を作っているのだという気付きを頂きました。

また、自動車会社の人間としてはハードで問題を解決しようと考えてしまいがちなのですが、ヘルスケア企業の方から「人間の体を変えればいいんでは?」と言われて、「そんな視点もあるのか」と驚いたりもしました。

 

 

 

 

 ビジネス・パーソンの鎧を脱ぎ一人の人として向き合うリーダー

 

私の思うリーダーのあるべき姿は、「ビジネスパーソンの鎧を脱ぎ、一人の人間」として目の前の人と向き合うことです。

何かの判断をする時に、ビジネスパーソンである以前にひとりの人間として、逃げ道を作らず言い訳せず突き詰めて決断するということを大事にしています。

 

またこのダイバーシティの時代、「個性を徹底的に磨く」というのも重要です。

女性の中には、自分に自信がない故にリーダーになりたがらない人もいます。私も自信が無くて悩んでいましたが、豊田社長から助言いただいたのが「人と比べなくていいんだよ、ダイバーシティが大事なんだから」ということです。

自分に自信を持つことが難しくても、リーダーとしての役割を全うするために、自分が本当にやりたいことや、得意なことを見つけ、それを徹底的に磨いていくことはできると考えています。一人の人間として抱いた問題意識を持って動いていけば、自分にできることも増えていくし、周りの人を巻き込んでいけるのだと思います。

 

「目の前の人に興味を持って、共に出来ることを考える」

目の前の人から学びを得られるように、心構えとして、違和感を放置しないようにしています。「どうしてこの人はここで頷かないんだろう」とか、「なぜ返事が返ってこないんだろう」という些細な気づきを大事にして、質問することで、思いがけない考え方や 自分とは違う視点に出会うきっかけになると思います。目の前の人のことを心から知りたい!と思って相対時するのが重要だと思います。

 

 

 

 

 

 

トヨタのリーダー達に求められる「思想」・「技」・「所作」

トヨタの経営はお客様起点であり、商品軸と地域軸の2軸でビジネスを考えています。

トヨタグループの創始者である豊田佐吉の考えをまとめた「豊田綱領」がトヨタのDNAですが、そこにある利他精神などのトヨタの「思想」、トヨタ生産方式という「技」、それを日々の生活や仕事の中で実行できる「所作」を身につけた人がトヨタのリーダー像として考えられており、各地域や各商品におけるリーダーに選ばれています。

リーダーたちは、現場で起こっている事実をいち早く掴んで、その場で即断・即実行していくことが求められ、それをどんどん共有しようという社風です。

社内ではSlack等のツールによるタイムリーな情報共有を進めています。社長から直接リプライが来たりするので、社長がどういうことを大事に思っているかが よく理解できて、更に価値観の共有が進みます。不確実性が高い時代でも 事実を確認、情報を共有しながら スピーディに経営をしていく、アジャイルな経営を目指しています。

 

 

 

 

「幸せを量産する」カンパニーとして

 

モビリティー・カンパニーへの変革に取り組むトヨタ自動車は「幸せを量産する」というミッションを掲げ、時代に求められていることに応じて目まぐるしく変革を続けています。

幸せを「量産」するためには、より多様な幸せを提供する必要があり、そのためには多様な意見や視点が必要です。ですから職場でもダイバーシティーが不可欠となると考えています。

 

現在、富士山の麓で着工中の”Woven Cityプロジェクト”は、モノやヒトに加えて”情報”の移動についても考えており、車同士の情報や車とインフラの情報を組み合わせて、渋滞などの社会課題の解決をすることや、人と人が出会って、人や街に活力が生まれることを目指しています。トヨタ自動車は、「まずは実行してみて、改善を重ねてきた会社」です。多様な社会課題を抱えている現代の世の中にとっては、様々なアイデアをすぐに試し、少しでも早く世に出していくサイクルを作ることが極めて重要だと考えています。

“Woven City”は、車をテストコースで鍛えるのと同様に、技術やサービスを鍛える街だと言えます。

 

 

Well-Beingの研究にも取り組んでいます。ゲームをしながらMRIの中に入り、その時の脳内の働きを研究しているチームもあったりします。どんな状況で人が幸せを感じ、その時に脳の働きはどうなっているか。Well-Beingとはどんな物なのか、トヨタにとってもこれからの社会にとっても、それを知るのは重要だと考えています。

 

 

 

 

長年トヨタ自動車に勤めてきた中で担ってきた様々な役割や、各プロジェクトでの経験や出会いを通じて、またその中でリーダーという立場から、様々な学びが得られたと感じます。チーフサステナビリティオフィサーとして会社のますますの変革を良い方向へ推し進めていければと思います。

 

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