北風 祐子氏
株式会社電通グループ dentsu Japan
Chief Sustainability Officer

3月 1, 2023 | Interview

北風 祐子氏

株式会社電通グループ dentsu Japan Chief Sustainability Officer

 

 

2022年 ㈱電通グループ 電通ジャパンネットワーク執行役員、初代Chief Diversity Officerに就任し、2023年より現職。東京大学文学部卒業後 ㈱電通に入社し、戦略プランナーとして顧客企業のマーケティングや新規事業等の立案・実施、またクリエーティブ局長を務めました。現在は国内のグループ会社を含めたサステナビリティ領域を管掌しています。フラットでオープンな、誰もが働きやすい世の中の実現を目指し、2008年に「電通ママラボ」を創設したほか、職場のアンコンシャスバイアスに気づく為の「バイバイバイアス研修シリーズ」、がん罹患経験者のピアサポートの場「ラベンダーカフェ」を企画、実施しています。

 

 

 

バイバイ バイアス! アンコンシャスバイアスを取り除く研修

職場に対する視野を広げる経験となった乳がん。

働きたいのに働けない人や、能力があるのにも関わらず最大限発揮できていない人々の存在に気がつき、誰もが働きやすい世の中にしたいという思いがあります。より理想的な就労環境を実現させるにおいて大きな壁となるのが「アンコンシャスバイアス」です。

人間なのでバイアスを完全になくすのは難しいですが、バイアスを持っていることに気が付く努力をしようという思いで私自身が立ち上げました。

「チームメンバーがもしも がん になったら?」という疑問を呈して、あなたがマネージャーだったらどう対応するか、というセッションから始まり、「育休明け社員と働く」というテーマで育休中の社員に対してのアンコンシャスバイアスを認識する回や、「ワークライフバイアス」ワークとライフをバランスさせなくてはいけないというバイアスに取り憑かれて自分を窮屈にしていませんか?と問うテーマ、「メンタル不調を抱えた社員と一緒に働く」というのはどういうことかを学ぶセッション、など多様なテーマに沿ってシリーズ化して研修を実施しています。

 

思い込みや固定観念に打ち勝つ考え方を自社と他社の両方に向けて働きかけ、電通グループの「サステナブルな社会をリードする存在となる」 という目標に向かって活動しています。

 

 

 

 

DE&I 課題 は「肩凝り」と似ている?

DE&Iの課題って「肩凝り」と似ていると思っています。

肩凝りって肩そのものを叩くというよりも、温かいお風呂に入ったり、外を散歩したり、睡眠を改善するなどする中で、全体の血流が良くなって肩凝りも改善するという風に、肩だけに問題点があるのではなくて生活様式や習慣・環境などさまざまなファクターや多角的な解決の糸口があると思うんです。

 

例えば「女性管理職比率」を上げなくてはいけないという課題が肩凝りだとすると、その女性管理職の点だけ揉みほぐしても根本的な解決にはならない。そうではなくて、組織全体の考え方や働き方や社員満足度など、より多角的な課題に取り組むべきだと思っています。

 

 

 

 

木を見て森を見る、空飛ぶ蟻 のようなリーダーシップ

正直、自分自身を「女性リーダーだ」とは意識してこなかったです。

一人で舵を取るというよりは、多様な価値観や経験の持ち主を集めたチームで一人では成し遂げられないことに取り組むことを大切にしています。

 

”The most personal is the most creative.”  (1992 Martin Scorsese NYU Graduation Speech)

という言葉を大事にしていて、最もクリエイティブなことは極めて個人的なことの中に隠れている、という風に解釈しています。

社会のために、というよりも、目の前に困った人がいたら一緒にどうしようか考えたり、自分が直面した課題などに全力で向き合ってきたと思います。

当時は比較的若くして子どもを産んだこともあり、ママラボというママ専門のユニットを作ったり、自分の考えたことや隣の人が感じていることをベースにして、その人らしさを武器にしながら仕事をしてきました。

なので、似たような人が集まっているチームには危機感を感じますし、自分のいうことを聞いてくれる人ばかりの組織は危ないと思って、逆に自分と異なる視点をもつ人や自分にできないことが出来る人とチームを組むよう心掛けてきました。

 

リーダーのあるべき姿は「空飛ぶ蟻」ということを意識しています。これはどういう事かと言いますと、細かいところに目が行き届く蟻の目と、俯瞰的に物事を見る鳥の目の両方を必要とする中で、蟻の目を持ち、細かいことが見えたまま空を飛べるようなリーダーからは説得力が生まれ、自然と仲間が集うのだということです。

蟻の目で仲間の考えを知り、その中のユニークな考えを尊重することこそが Diversity, Equity, and Inclusion のある職場を作るリーダーの務めであると考えています。

 

 

 

人と人との「Trust(信頼)」がこれからの社会のキーワード

2023年1月、ダボス会議に参加する機会に恵まれ、サステナビリティのグローバルな潮流を感じてきました。気候変動やインフレ、ロシアーウクライナの戦争だけでなく台湾有事、エネルギー問題など、さまざまな議題がある中で、新しい領域として、「社会的弱者」のテーマが大きく取り上げられていました。

ダボス初のLGBTQ+のディナーセッションや、「働き方×脆弱性」という弱さをオープンにして働くことを肯定するワーキングセッション、職場のメンタルヘルスセッション、リスキリングの可能性を考えるセッションがあったり、日本ではまだ浸透していない最先端の議題もありました。

 

その中で最もキーワードになっていたのは、「Trust(信頼)」というワードです。世の中が分断・対立する中で、人と人の「信頼」をどう築いて行くかというのを世界のトップリーダー層が真剣に議論していたのが印象的でした。

 

 

 

dentsu Japanの実例(ケース)

本年からOne Dentsuというグローバルなマネジメント体制に変わりました。日本地域以外にも北米地域や欧州地域など3地域のマネジメントと横断的に話す中で、日本だけでは1年経っても思いつかなかったアイデアがすぐさま出てきたり、DE&I先進国である他国の視点から日本の現状に対するアドバイスや解決案をもらえて、進展にスピード感が出ていると感じています。

一方で、海外のマネジメントはジョブ型のようになっておりギャップを感じています。日本は360度評価などで社内評価を上げてきたジェネラリストがマネジメントになっている一方で、海外は例えばIRのプロや人事のプロなどスペシャリストとしての強みをもつかたが外部からマネジメントに参画してきます。

こうしたグローバル企業の意思決定層に入っていける日本人や女性や多様な人材が増えたらいいと思います。日本においてもスペシャリストとしての育成やジョブ型に対応出来るように研修の拡充や異動機会の提供が重要だと考えています。

 

 

 

“An Invitation to the Never Before” というパーパスのもと、本年度から電通グループは、ステークホルダーにとっての企業価値を最大化するために、日本事業と海外事業をワンマネジメント体制として、新たな取り組みを開始しました。

そのように海外事業との交流が生まれた中で新たに見えてきた日本での職場の課題によって、より一層強まる思いと共にSustainabilityやDE&Iの確立に努めています。

 

 

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